公益財団法人 日本生涯学習協議会(所管:内閣府) 監修・認定 パンコーディネーター認定講座主催

一般社団法人 日本パンコーディネーター協会は、パンを通じた生涯学習の普及推進を活動の大きな目標に掲げ、食の世界でのプロフェッショナルを育成・輩出することを目的としています

 

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カフェ&レストラン(旭屋出版)2008年6月号連載

第13回 『親愛なるパンへ。Clevaのメッセージ』より


自らパン生活を楽しみ、その魅力を伝えていくプロフェッショナル、
パンコーディネーター。
パンコーディネーターとなったClevaの最初の活動は・・・トークイベント!?


認定試験に合格し、このたびめでたくパンコーディネーターとなった私。
「絶対合格しなくては!」というプレッシャーから解放され、ほっと胸をなで下ろしたのも つかの間、私にはパンコーディネーターとしての最初の大役が待ち受けていた。
一般社団法人 日本パンコーディネーター協会主催でトークイベントを開催することになっていたのである。
テーマは『取材したくなるパン屋さん』。この連載で取材したパン屋さんのエピソードを中心に、記事には書ききれなかった事や後日談などを話すことになっていた。また、私のパンにまつわる経歴、趣味であったパンが仕事に結びついた経緯も・・・。

 

講師の稲垣さんから この話をいただいた時、最初こそ「いやいやいや。人前でトークだなんて とてもできませんよ〜っ!」と 小心者の私は首を横に振っていたのだが、稲垣さんと一緒に何かやりたい気持ちは大きく、意を決して引き受けることにした。私は情熱を持って物事に取り組んでいるアツイ人に弱いのだ。彼女となら楽しいことができるという予感があった。

そして「伝える」という行為は、パンコーディネーターとしての重要な役目だと思ってもいた。


イベントをやることに決めてからは早かった。あれよあれよという間に時間は流れ、気が付けば当日。お客さんの中には製パン関係の方や出版関係の方もいると聞いていたので、さぞ緊張するだろうなぁと思っていたのに、私はびっくりするほど緊張していなかった。
隣にはインタビューアーの稲垣さんがいて、目の前には 私の話を聞きに来てくれた大切なお客さんがいる。そう思えたからだろうか・・・。ようし、私もこの時間を楽しもう!つたないながらも私は言葉を紡いでいった。


慣れない取材に緊張しつつも、楽しんで執筆していた連載初期の話。失敗談。
経営の難しさや厳しさを教わり、「作り手」の立場も考えるきっかけとなった話。
シェフの意識の高さに圧倒されつつも、パンの新しい可能性に触れワクワクした話。
「食べ手」もパンの知識を身に付ける必要性を感じた話。

・・・などなど。


自分の過去を辿り 人に話す事は、自分自身と向き合う事だった。思い出したくもない失敗や、自己嫌悪に陥った出来事もたくさんあったけど、それらは『経験』という名の人生のこやしになっていて、かけがえのない私の財産なのだ。今になって そう思えるようになった。
イベントでも紹介させてもらったのだけれど、私には忘れられない印象的な言葉がある。それは、『ZOPF』の取材後、奥様のりえさんからいただいたメールでの一文だ。
取材後、実を言うと私は凹んでいた。店長とりえさんに話を伺って、自分がパン屋さんの現実や厳しさなんて全然わかってない事に気付かされた。自分が薄っぺらーい人間に思え、この連載の意義を見出せなくなっていた。記者の真似事など、やはり自分には向いていないのだ・・・と。
そんな私の気持ちを見透かしたかのように、りえさんのメールにはこう書かれていた。
『仕事って面白いもので、苦手なものほど近づいてきますよね。(中略)今はお子さんも小さくて、一層大変と思いますが、「継続」ほど出来そうで出来ないもの、あとから欲しがっても手に入らないものです!今のお仕事を続けられたらきっと大きなご褒美がやってくると思うし、誰にも得られないものが手に(心に)入ってあふれるんだと思います。』
カンパーニュ 本当にその通りだと痛感している。今でも取材のたびに緊張するし、何回やっても慣れない。悩むことの方が多いこの連載だけれど、何とか1年続けることができたのも、もうちょっと頑張って続けていこうと思えるのも、この言葉が心に焼き付いているからだ。


イベントが終盤にさしかかった頃、お客さんにタルティーヌが配られた。パンは『ル・クール』のカンパーニュ。菅井さんなら最高のパンを焼いてくれると信じてお願いした。妥協のない仕事、パン作りにかける熱い想いを知っているから安心してお任せできた。
そのカンパーニュは、一般社団法人 日本パンコーディネーター協会の皆さんの手によって、春らしい華やかなタルティーヌへと姿を変えた。「おいしい!」というお客さんの声、お店にそのまま届けたかったなぁ。

最後に 私の想いといくつかのメッセージを伝え、イベントは終了した。

 

帰り際、サプライズ企画として、私からお客さんひとりひとりにお土産を手渡した。『ポム ド テール』の工藤さんに、このイベント用の特別ベーグルを作っていただいたのだ。ベーグル皮パリ&巻き込みベーグルは唯一無二のもの。私の大好きなこの味をお客さんに感謝の気持ちとともに贈りたかった。工藤さんは、お店が定休日にも関わらず快く引き受けてくださった。
このイベントを通して、これまで取材に伺ったお店が、私の中でますます大切な存在になった。

イベントが終わってから、たくさんの方から温かいメッセージをいただいた。思い切ってやって良かったと心から思う。送られてきたメッセージで一番嬉しかったのは「励まされました。」という言葉。私から見れば、能力も将来性もある方ばかりに思えるのだけれど、皆、迷っていたり、不安に思う気持ちは同じなんだ・・・。もしも、私の言葉が誰かの心に届き、小さな勇気や安心感を与えることができたとしたら、これほど嬉しいことはない。いくつも「ありがとう」の言葉をいただいたけれど、私の方こそ声を大にして「ありがとう」と言いたい。
「伝えること」の喜びを 初めて味わった気がした。


パンコーディネーターの勉強とこのイベントを通して、私は「作る」「売る」以外でのパンの関わり方に興味を持つようになった。今は朧気にしか見えないその道を、「パンが好き」な気持ちを手がかりに手探りで進んでいるところ。私と同じように模索している人達も、それぞれが自分の道を見つけられますように。

 

カフェ&レストラン(旭屋出版)2008年6月号連載記事


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