セミナー 「国産小麦の知識を深めよう! 」
- 日時:
- 2008年6月27日(月)
- 時間:
- 19:00〜21:00
- 場所:
- 世田谷ものづくり学校
- 講師
- 江別製粉 安孫子俊之氏
小麦粉はパンを構成する上で最も重要な材料の一つでもあり、近年では自給率向上、地産地消等の動きで、国産農産物の利用促進に取り組む企業が増えたり、消費者の食の安全への不安などから国産小麦の出荷量が増え、注目を浴びています。
そこで、パンに携わる方々により小麦の知識を深めていただければと思い、講師に江別製粉株式会社の安孫子俊之氏をお招きして、国内生産の65%を占める北海道産小麦にフォーカスをあてた現地でのさまざまな小麦の栽培方法、収穫から製粉されるまでのプロセスなどといった普段なかなか聞けない貴重なお話を図表やグラフを見ながらお話いただきました。
昨年秋ごろから国産小麦の需要が増えたのには様々な理由があり、中でも中国餃子の食中毒事件や輸入小麦の価格上昇とった事象がほぼ同時期に発生したのが大きなきっかけだといわれています。安全性を意識したパン屋さんや、国産小麦に興味を持つ消費者は多く、需要は増えていく一方ですが、国内の小麦生産量に関してはここ数年で増えてはいるものの、平成18年産の小麦の国内消費量620万トンのうち、国内生産が約13%にとどまっているのが現状なのです。
こうした生産量の伸び悩みには、小麦の品種による問題と、昨年から年に二回、小麦相場の変動に合わせて売り渡し価格を変える制度(品目横断的経営安定対策)へ切り替わったことによる小麦収入の減少があげられます。
北海道産小麦の品種の中で、パン用に適していると言われている代表銘柄に「ハルユタカ」「春よ恋」があり、共に人気と需要があります。しかし、北海道における小麦生産の割合でいうと、生産量の91.2%を占めている「ホクシン」、次いで「春よ恋」4.2%、「キタノカオリ」1.5%、「ハルユタカ」0.6%とパン用小麦は希少。また、小麦には種まきと収穫時期が異なる春まき小麦と秋まき小麦があり、「ハルユタカ」「春よ恋」においては春まき小麦にあたるのですが、特に「ハルユタカ」は穂発芽や赤かび病といった病気の被害が多く、生産が難しいとされているのです。
「ハルユタカ」は1987年に開発されたパン用小麦の国産第1号ですが、病気の被害が原因でこれまでに幾度か消滅の危機に瀕しています。しかし、1985年台に偶然発見された「ハルユタカ」の究極の早播き栽培“初冬まき栽培”がその危機を救います。以降、市を挙げた多くの方々の研究・努力・理解・協力が実り、近年では安定した収量を確保できるようになったのです。地元のテレビでもこの「初冬まき栽培誕生」のドキュメンタリーが放映され、本セミナーでも全員で鑑賞しました。現在もなお、この栽培方法の勉強会などを通じて初冬撒き栽培の普及を図っており、江別市の方々の「ハルユタカ」に対する熱い思いと期待がヒシヒシと感じられます。 今回の講演を聞いた参加者の皆様からは、「非常に内容がわかりやすく、ますます小麦に対する興味や知識が深まった」「生産者の方々には是非頑張ってほしい!」「ハルユタカのファンです!」といったエールを送る声が多くありました。
1. はじめに
1)会社紹介・自己紹介
2)江別製粉と北海道産小麦
3)ここ最近…販売の現場から
2. 国産小麦生産状況
3. 北海道産小麦品種と新品種
4. 小麦の1年〜北海道の小麦栽培
1)秋まき小麦
2)春まき小麦
3)春まき小麦の初冬まき
5. 小麦畑〜収穫〜製粉〜小麦粉になるまで
6. ハルユタカはもう無い?
1)生産状況
2)復活の道
3)「初冬播き栽培」とは
7. その他
1)価格改定
2)需要と供給
3)産地では…減収、新品種導入、後継者
8. 国産小麦のパン作りに関する質疑応答