[協会設立記念講演]
4人のパンのスペシャリストが語る!“パンのおいしさについて”
第1回講演 : 来栖 けい さん
- 日時:
- 2007年9月19日(水)
- 時間:
- 19:00〜21:00
- 場所:
- 世田谷ものづくり学校
- 講師:
- 来栖 けい (美食家/「美食の王様 パン 絶対おいしい92店」著者)
日本パンコーディネーター設立記念講演会の記念すべき1回のスペシャリストとして、「美食の王様」来栖けいさんをお招きし、テーマである「パンのおいしさについて」語っていただきました。
来栖けいさんは、グルメ界に衝撃を与えた“食べる天才”。弱冠28歳という若さでありながらグルメ評論家の雄・山本益博氏に「わたしの仕事を超えてゆく新人がついに現れた」と言わしめたほどの稀代の美食家です。その舌は、食材の原産地の違い、調理法、組み合わせの善し悪しから、コースの組み立てまで分析でき、正確に味を記憶し、表現できる・・・人並み外れた「舌」と「胃袋」、そして「食への愛情」の持ち主なのです。
そんな来栖さんの講演会は、パンだけにとどまらず、周りにある食材からレストランのコースの組み立てに至るまで、珠食家ならではの視点から「パンのおいしさ」にアプローチしていただきました。
たくさんの興味深い話の中で、印象に残るテーマが2つありました。
一つ目は、「おいしいパンとは?」の問いかけに対して答えた「冷めたて」の4文字。
よく言われる“焼きたて”がおいしいというのは実は間違いで、本当においしいのは“冷めたて”であると来栖さんは話します。
確かに、焼きたて=オーブンから出してアツアツ=美味しいという表現は否定できませんし、テレビ番組のレポーターも、湯気立つパンをほおばって、その美味しさを視聴者に伝えます。しかし、本来の「パン」そのものを味わうには、湯気が出るほどのアツアツよりも、粗熱が取れ、パン内部の水分移行や香りが落ち着いてからであるというのは、パンを作られる方や、好きな方にはご存知の方が多いかと思いますが、一般には知られているようで、実はまだまだ知られていないのが実状だったりします。
いままで聞いたことのない「冷めたて」というボキャブラリーに新鮮さを感じます。
二つ目は、レストランのコース料理に合わせたパンのコーディネートの話。
一般的には、何にでも合わせやすいシンプルな塩味のバゲットが前菜・魚料理・肉料理と一貫して提供するお店が多いと思います。それは決して間違いではありませんが、ソムリエが料理の素材、味、ボリューム等に合わせて、ワインをコーディネートし、その一皿とのマリアージュを楽しませてくれるように、例えばメインディッシュに肉料理がサーブされたら、お肉の脂っぽさを和らげてくれる酸味のあるパンが提供されるように、パンもその提供される料理に合わせてマリアージュを楽しませてくれるお店が増えたら・・・
そんな来栖さんの話に、こういったレストランなどのシーンで、ワインのソムリエのように、パンのソムリエ“パンコーディネーター”がお料理とのマリアージュをお客様に提供してくれるようになってくれたら、美味しい料理がもっと美味しく味わえ、食の楽しみが広がるのではないかと思わずにはいられません。
様々なアプローチで「パンのおいしさについて」語って頂いた講演会を通して、来栖さんのおいしさを伝えるための明確なこだわり、そして食に対する探求心と愛情を垣間見ることができました。ありがとうございました!
<プロフィール>
来栖 けい
弱冠27歳にしてテレビ・雑誌・新聞等多数のメディアでグルメ評を行っている自称「食べる天才」。人並み外れた「舌」と「胃袋」、そして「食への愛情」の持ち主であり、その舌は、食材の原産地の違い、調理法、組み合わせの善し悪しから、コースの組み立てまで分析でき、正確に味を記憶し、表現できる。 これまでに食べ歩いたレストランだけでも6000軒以上。 「エル・ジャポン」での連載、「王様のブランチ」の準レギュラー、「ぐるなびプレミアム」の審査員、All About[ 食べ歩き(首都圏)]のガイドなど。 著書:『東京最高のレストラン 2006』(ぴあ)、 『美食の王様 パン 絶対おいしい92店 厳選の210種』(筑摩書房) など