「ものを作るのが好きで、パンか陶芸どちらを学ぶか迷っていました。この家も、本当は自分で建てたかったくらい」
畑に囲まれた都区内のログハウス。自宅兼教室のダイニングでそう語るのは、手作りパン教室「cotocoto cotona」を主宰するさかまきよしみさん。　
栄養士やクッキングスクールの講師として食に長く関わってきた彼女だが、好きなのは料理だけではない。日曜大工をしたり絵を描いたりと、ものづくり全般が大好き。
「ものを作ることや、言葉を選び話すことなど、”相手に向けて発信すること”は、相手の気持ちを考える営みそのものだと思うんです。そこで生まれる喜びや気づきを伝えていきたかった」
また、教育機関の栄養士として働くなか、それらを教えられる大人が少ない現状を目の当たりにしてきた。
「子どもたちに自ら気づいてもらえるように、私にできる”食”という視点からサポートしていきたい」
そんな想いから”食育”を意識するようになる。

”実験”を楽しむ感覚で、食べ合わせを考える

パンコーディネーターの講座を受講したのは、2008年春のこと。製パンの原理や歴史を本格的に習うべく、一歩を踏み出した。パンコーディネーターとなったことで「パンの”先生”になる」ことを望むようになった。
「これまで趣味でやってきたことをみんなに伝えたい、”子どもの食育”と”大人の食育”を分けてわかりやすく話していきたいと思うようになりました」
　さかまきさんによると、最近の子どもたちは手が汚れるのを嫌がるとか。泥遊びもしないし、パンもベタベタしているときはさわりたがらない。そんな子どもたちに、手を使って作る楽しさを教えたい。それがパン作りをレッスンに取り入れるきっかけになった。 　また、講座で学ぶパンの食べ方や食べ合わせも、ものづくりを愛する彼女にとっては興味深いものだった。
「”実験”が大好きなので、食べ合わせを考えるのがおもしろい。こういうことが活きる仕事があるんだと改めて気づきましたね」

レッスンでの体験から臨機応変なパン作りを学んでほしい

「cotocoto cotona」のレッスンは少し変わっている。
今回作るのは、ココア、砂糖、パルメザンチーズの3種の生地で作る三つ編みパン。ココアは水分がなじみにくいため、通常はあらかじめ小麦粉と合わせておく。しかし今日のレッスンでは、あえて基本の材料を先にこね、あとからココアを加える。当然、最初はココアの粉がなじまず大変なことに。
「”あっと気づいたとき材料を足す”ことを想定しました。実際のパン作りでは途中で”あれを入れたい”って思いつくことがある。そんなときどうなるのか体験してほしかった」
体験を通して臨機応変に作ることを学ぶ――それが教室のスタンスだ。
生徒さんたちも、そんなレッスンを楽しんでいる。「機械を使わずいちから手づくりするのが楽しい」「食を楽しみ、大切にする心を学べる」と口をそろえる。
「パンはゆっくり室温で発酵させることも、オーブンで発酵させて手早く作ることもできる。自分で時間の流れを作り上げられるんです。そのゆとりの時間のなかで、ものづくりの喜びを感じてほしい」と、さかまきさんは語る。

＜おすすめの食べ方紹介＞

チョコ×チーズ×パンは最強トリオ
デザートにおつまみに大変身！
「実験が好きだから、ちょっと言えないようなおもしろい食べ合わせを考えることも笑」とさかまきさん。最近のお気に入りは、チョコチップ入りパン×クリームチーズ×メープルシロップ。「大好きなものを全部のせた感じ」というハッピーな組み合わせ。
「ティラミスも、土台のスポンジケーキの代わりにフランスパンを使うと、塩味がアクセントになっておいしいですよ」と、アイデアは尽きない。